睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは、寝ているときに無呼吸や低呼吸になることで、体に酸素が行き渡らなくなる病気です。酸素が体に行き渡らなくなることで、低酸素状態に全身が陥ります。 軽度であれば日中の眠気や倦怠感程度ですが、重度だと様々な臓器に負担がかかります。まず、酸素が足りない分、心臓が頑張らなきゃと負担がかかることで、高血圧や心不全を合併します。また全身に負担がかかることで血管が固くなる動脈硬化が進行して、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を引き起こすこともあります。
この睡眠時無呼吸症候群は、
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(O-SAS)
- 中枢性睡眠時無呼吸症候群(C-SAS)
の2種類のタイプがあります。
大部分は、①の閉塞性睡眠時無呼吸症候群で、喉から気管支にかけての通り道が狭くなることで、寝ているときに低酸素になるタイプです。
空気の通り道が狭くなりやすい人としては、
- 肥満
- 扁桃が肥大している
- 下あごが小さい
- アルコールを日常的に飲んでる方
- 高齢の方
- 鼻づまりや鼻腔変形
の方が起こりやすいと言われています。
特に、肥満の方は要注意です。肥満の方は見た目だけでなく、体内にもぜい肉がついてることが多いです。そのため喉もぜい肉で狭くなっており、そこに横になって重力がかかることで息の通り道がさらに狭くなって、睡眠時無呼吸症候群が起こります。
またお子さんに多いのですが、扁桃腺肥大も、物理的に狭くなりやすいため、睡眠時無呼吸症候群が起こると言われています。
アルコールを寝る前に飲んでる方は、気道の筋力が弛緩してしまいます。高齢の方も、気道の筋肉が落ちることで狭くなる可能性があります。
さらにアジア人は、欧米人に比べ、下あごが小さい方が多いため、肥満ではなかったとしても睡眠時無呼吸症候群の人が多いと言われているため積極的に疑う必要があります。
閉塞性ではない、②の中枢性無呼吸症候群は、脳から呼吸筋に対して正しく機能するように送る信号が何らかのエラーが起きて、寝ているときに正常な呼吸ができない病気です。
主に脳や脊髄、心臓に影響を与える病気などや、呼吸を抑制するようなお薬の影響などによって引き起こされる②中枢性睡眠時無呼吸症候群ですが、かなり特殊な疾患になります。そのため大部分は①閉塞性睡眠時無呼吸症候群(O-SAS)になります。
睡眠時無呼吸症候群の症状
この睡眠時無呼吸症候群を疑う症状には下記のような症状があります。ご自身が当てはまらないかチェックしてみましょう。
寝ているときの症状
- よくいびきをかいてるのを指摘される。
- いびきが一時的に止まり、その後に大きないびきが再開する。
- 呼吸が止まっている(無呼吸)
- 何度も目が覚めて、熟睡ができない
- よく寝汗をかく
起床した時の症状
- 口の中が起きたら乾いている
- 頭痛がする
- 目覚めが悪いせいで、熟睡できた感じがしない
日中の症状
- 眠気が常にある
- 会議中など寝てはいけない場面でも寝てしまう
- 倦怠感が強く、疲れが常に溜まっている
- 集中力が続かない
- 運転中にうとうとしてしまう
このような症状が当てはまる方は睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。特に絶対に寝てはいけない場面でも寝てしまう方はかなりリスクがあります。
2012年に関越自動車道で起きたバス事故が睡眠時無呼吸症候群を世間に注目させた一つの事故になります。運転手が睡眠時無呼吸によって、居眠り運転をしてしまい、バスが高速道路脇の壁に衝突しました。これによって乗客7名が亡くなり38名が重軽傷を負ったことから、世間でも睡眠時無呼吸症候群に対して注目を集めたきっかけになりました。
このように生活に支障がある眠気の方は睡眠時無呼吸症候群の可能性がかなり高いです。
また、
- 高血圧症
- 糖尿病
- 脂質異常症
と生活習慣病がある方は要注意です。先ほど記載した肥満に加え、飲酒されていたり、運動不足であったりとリスクがあるからです。特にこの中でも高血圧症の方はかなり要注意です。もしかしたら睡眠時無呼吸症候群があることで心臓に負担がかかって高血圧になっている可能性があります。その場合見た目の血圧の数字だけを下げても、意味がありません。睡眠時無呼吸症候群を治療する必要が出てきます。
症状やリスクある疾患がある方はぜひ検査を受けていただければと思います。
当院の睡眠時無呼吸症候群の検査について
当院では睡眠時無呼吸症候群の検査は、総合病院とほぼ同じ検査ができるように体制をとっております。検査としては
- アプノモニター(簡易睡眠時呼吸検知装置)による簡易検査
- 在宅での終夜ポリソムノグラフィ―検査(在宅フルPSG検査)
の2種類があります。それぞれの説明ですが、
① アプノモニター
まず導入が①アプノモニターです。
下記の小型の検査機器をつけて行います。
この機械を図のように、
- SpO2プローブを指に装着する
- 鼻にカニューレを装着する
簡易睡眠時呼吸検知装置というだけあって、2つ装着するだけで簡単にできます。
SpO2プローブは、体内の酸素状態を測定する機器です。睡眠時無呼吸症候群にて、息がうまくできずに低酸素状態になっていないかを、指につけたSpO2プローブで確認します。鼻のカニューレは、鼻からの空気の流れといびき音を確認します。以上にて
- 呼吸状態
- 酸素状態
- いびきの状態
を精査していきます。非常に簡便にできるため、自宅でもできます。機械の貸し出しは各検査会社様が届けてくださいます。説明書を読めばだいたいわかるようになってますが、分からなければ検査会社様にご連絡いただければご対応するようになっております。
価格は、3割負担の方は3,000円くらい、1割負担の方は1,000円くらいとなっております。また機械をお送りしていただいてから会社で解析するため4週間程度結果が出るまで時間をみていただければと思います。
この検査で重要になるのが、AHI(Apnea Hypopnea Index:無呼吸低呼吸指数)です。
AHIとは、
- 低酸素状態になっている状態
- 10秒以上呼吸が停止した状態
の総和で計算される数値です。この値が、
- 正常・・・AHI 5未満
- 軽症・・・AHI 5~15未満
- 中等症・・・AHI 15~30未満
- 重症・・・AHI 30以上
- CPAPでの治療が認められる数値・・・AHI 40以上
となっております。そのため、簡易アプノモニターでは、
- 実際に睡眠時無呼吸症候群かどうか?
- 睡眠時無呼吸症候群の重症度はどうか?
の2点を判別することができます。
② 在宅での終夜ポリソムノグラフィ―検査(在宅フルPSG検査)
簡易アプノモニターでAHI5以上と睡眠時無呼吸症候群と診断されかつ40未満の場合は、国の方針として、脳波を含めて細かく精査をするフルPSG検査という検査が推奨されておりました。これは、さきに述べた、
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(O-SAS)
- 中枢性睡眠時無呼吸症候群(C-SAS)
のどちらか精査するとともに、本当に治療適応があるか細かく精査する必要があったためです。従来このフルPSGは、総合病院や睡眠時無呼吸専門センターなどを受診して一泊する必要がありました。しかし患者様には、
-
転院することで、新しい病院に行かなければならない
-
総合病院などでは決まった外来日しか行けない
-
入院施設に一泊する必要がある。
-
入院施設の都合で、検査日が制限される。
-
入院費用含めて(3万から5万円)と検査代が高額である
と多くの壁がありました。働いている方にとっては、受診日や入院日が限定されること、さらに個室で検査を行うため個室代が非常にかかることから、以前は簡易アプノモニターによる追加検査が必要で、それ以上の検査を断念してしまうことが多かったです。しかし、2018年ごろ、このような方々を救うために、自宅でこのフルPSG検査ができるようになった機器が登場しました。以下のような機器を自宅で装着します。
この機械をつけて寝るのですが、寝ている参考写真が以下のようになります。
この検査で
- 脳波
- 呼吸状態
- 酸素状態
- いびきの状態
- 心拍数
- 筋肉の動き
を測定することができます。寝なれている自宅で測定できるため、普段の状態に近い睡眠環境で測定することができます。また入院費用も必要なく、保険料も検査技師が夜間常に起きている必要もないため入院して行うFULL PSGより価格が安くなっております。通常の入院でのPSGは3万から5万のところを、1万3000円でこの在宅PSGは行うことができます。また週6日いつでも検査可能なためご自身の都合の良い時に行うことができます。
唯一のデメリットとしては、
- 眼球の動き
- 筋肉の動き
- 細かい脳波波形
が精査できないため、
- 周期性四肢運動障害やレストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)
- 過眠症(ナルコレプシーなど)
の評価はできません。そのため、簡易アプノモニターや症状から総合病院の精査が適している場合はご案内させていただきます。一方でこれら特殊な病態を疑う必要がない場合は、ほぼ自宅のFULL PSGで問題ありません。睡眠時無呼吸症候群の有無、睡眠段階(睡眠の深さ)に関して専門の検査技師にて結果を精査するため、入院時に行うFULL PSGと結果がほぼ変わらないからです。むしろ睡眠環境が変わらない自宅でできる分、普段の自分の睡眠状態が自宅PSGでわかる可能性があります。夜間の結果を細かく分析するため、受診してから約1か月後に結果をお話させていただきます。なお先ほどのアプノモニターではAHI40以上がCPAPの治療対象になりますが、FULL PSGではAHI20以上でCPAPの治療対象になります。逆に言えばアプノモニターでAHI20以上超える方はぜひ精査して、睡眠時無呼吸症候群の細かい状況を精査するようにしていただければと思います。
このように当院では、
- アプノモニター(簡易睡眠時呼吸検知装置)にて睡眠時無呼吸症候群の有無、重症度を診断します。
- アプノモニターで睡眠時無呼吸症候群が確定し、症状や合併症から治療が必要であれば在宅での終夜ポリソムノグラフィ―検査(在宅フルPSG検査にて精査を致します。
のように状況に応じて複数の検査を使い分けて患者様の睡眠状態を確認しようと思います。なお、他院で他の検査を事前に行っている方などは柔軟にご希望に沿って検査致しますので、ぜひ医師に相談してください。
当院の睡眠時無呼吸症候群の治療について
睡眠時無呼吸症候群の治療は現在
- マウスピース
- CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)
- 外科的治療
の3つの治療があります。
簡易AHI 40以下、FULL PSG 20以下と軽度から中等症の睡眠時無呼吸の方はマウスピースにて改善することができます。マウスピースで下あごを上あごより前方に固定させることで上気道を広く保ち、いびきや無呼吸を予防する治療法で対応可能です。睡眠時無呼吸が軽症の方はこのマウスピース作成が可能な歯科をご紹介させていただきます。
一方でアプノモニターでAHI 40以上、FULL PSGにてAHI20以上と重度の睡眠時無呼吸の方では、マウスピースでは効果が不十分のことが多いです。そのため、この条件に当てはまった方は当院では積極的にCPAP治療を推奨しております。CPAP治療は、日本語で経鼻的持続陽圧呼吸療法といいます。このCPAP治療は、鼻や口に装着したマスクから一定量の空気を流し込み、一定の圧力を気道にかけ続けることで気道を開く治療法です。CPAP治療は著明な効果があり、多くの方がAHI5以下まで正常化することができます。
一方でCPAPは気道が狭くなっていることを治しているのではなく、圧をかけて一時的に気道を開いているだけなので、一日だけ付ければ良いという治療ではありません。CPAPは毎日つけることで、気道を開き続けて効果を得る治療法です。
なお空気を流し込み続ける機械というと凄い大きいのを家におくのか心配される方がいらっしゃいますが、近年は大きさも縮小化されておりかなりコンパクトとなっております。多くが写真程度の大きさです。
CPAPは、15~20cm位の大きさであるCPAP機器本体でだいたい、お弁当箱大の大きさと言われます。持ち運びできる大きさであり、旅行や出張などにも持っていける大きさとなっております。これに空気を送り込むホースと、鼻や口につけるマスクがセットです。実際に使用している画像が下記になります。
写真をみると
- 鼻にマスクをつけたらむしろ苦しそう。
- 気になってそもそも寝れないんじゃないか
- 毎日つけるのめんどくさそう。
といった心配される方もいるかもしれません。経験したことない治療に対して不安感が出てくるのは当然のことです。皆さんいざつけてみると、
- 意外と平気だった
- 徐々に慣れてきた
- むしろ朝起きたらすっきりしていた
とポジティブの意見の方が多いです。ぜひ、一度試してみて効果を実感していただければと思います。
なお、CPAP治療は毎月受診して、治療を継続する治療法です。CPAPの機械はレンタルで、保険診療で対応致します。費用は
- 在宅持続陽圧呼吸療法指導料250点+在宅持続陽圧呼吸療法用治療器加算960点+在宅持続陽圧呼吸療法材料加算100点=1,310点
となり、これに再診料などがかかるため3割負担の方は約4800円前後、1割負担の方は1800円前後になります。なお、機械代金含めて払っているので、
- ホースが汚れているから変えたい
- マスクの大きさが合わないから変えたい
- 違う機種に変更したい
等は一切追加費用は掛かりません。また、毎月受診することでCPAPの状態をチェックしていきます。具体的には
- 適切な使用時間が得られているか
- 空気漏れを起こしていないか
- AHIが改善して良質な睡眠が得られているかどうか
等をお話させていただきます。先ほどの患者様のご意見と一緒に、結果をぜひ毎月確認して行ければと思います。どの曜日、時間を受診しても、同じ診療が受けられるため安心していつでも受診いただければと思います。毎月通うため、患者様の負担にならないように当院では週6日診療しております。予約外でも対応できるためご自身の都合に合わせて受診が可能です。
なお患者様の中には、一定数どうしてもCPAPが合わない、つけられないといった方がいます。しかしすぐに諦めてしまうのは早いです。なぜCPAPが合わないか原因を突き止めることで解決することも多いです。
- CPAPをつけると鼻がつまる→点鼻薬や内服薬で改善
- CPAPのマスクが合わないできつい→マスクを変更したり、担当者にマスクを調整してもらい改善
- CPAPの圧がきつくて寝れない→圧を最初は減らして徐々にならすことで使用可能に
1日やってみて、『合わないから辞めておこう』と睡眠時無呼吸症候群を放置してしまうと、心臓や脳に酸素が行き渡らなくなり、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす可能性があります。そのため当院では患者様の健康を守るためにも、なぜCPAPが継続難しいかを突き詰めて解決していこうと思います。
なお当院では、
- 帝人ヘルスケア
- フクダライフテック
- ソリュウション
- 星医療酸酸器
- 小池メディカル
- ノーザリーメディカル
- MAGnet
の7社と提携しています。また、選択する会社は検査を行った会社を最初は選択しますが、その機械がベストとは限りません。
患者様の状態やご希望に合わせて柔軟に会社変更は可能です。このように当院では全力でCPAP治療が継続できるように患者様をサポートしてまいります。
またCPAP開始された方の中にはいつまで続ければ良いんだろう?と疑問に持たれる方が多くいます。CPAPは先ほど記載したように気道が狭いのを治すわけではなく、一時的に寝ているときだけ気道を開く治療です。そのため辞めてしまうとまた気道が閉塞してしまう可能性が高いです。一方で私生活を改善することでCPAPを卒業することができる人もいます。
睡眠時無呼吸症候群の一番の原因である肥満を改善することが一番の近道です。運動や食事療法を頑張って痩せることができた方は再度簡易アプノモニター検査施行して、機械をつけなくても問題ないか検査することもできます。ぜひCPAP開始された方はご自身の生活を見つめなおしてみましょう。
まとめ
- 当院では簡易アプノモニターで睡眠時無呼吸症候群かどうか検査することができます。
- 当院では入院ではなく、在宅でFULL PSG検査することが可能です。
- 当院ではCPAP通院が週6日、どの時間でも可能です。
- 当院ではCPAPの結果を医師がチェックして患者様にお伝えします。
- CPAPが継続できない原因を解決して、続けていけるよう努めてまいります。
睡眠時無呼吸症候群は、近年非常に注目されている病気です。本来寝ることで体が休まるはずが、寝ることで逆に低酸素になり心臓や脳、血管に負担をかけ続けることで、様々な疾患を引き起こします。一方で睡眠時無呼吸症候群は検査しないと実際に発見されることは非常に難しい病気です。
- 最近太ってきた
- 一緒に寝ている人にいびきがうるさいと言われた
- 仕事中眠くて辛い
等何かのサインを見過ごさないことが大切になります。ぜひこのページをご覧になった方は、検査を受けてみて実際に自分が睡眠時無呼吸症候群かどうか確認していただければと思います。