心筋梗塞

心筋梗塞について

心臓が働くために栄養や酸素を心筋に届ける冠動脈が閉塞し、心筋で酸素が足りなくなって壊死した状態を心筋梗塞と呼びます。発症原因としては、生活習慣病などによる動脈硬化の進行が挙げられ、冠動脈に蓄積したプラークが壊れ、冠動脈が完全に閉塞します。なるべく早めに専門的な治療を受けることが重要であり、救急車を呼ぶことを強く推奨します。
よくある症状は、突発的な胸痛です。強く締め付けられる、押しつぶされる、灼熱感などの痛みが起こって、吐き気・嘔吐、冷や汗などの症状が起こる場合もあります。症状は20分〜数時間継続します。狭心症発作とは比較できないほどの痛みが長引き、ニトログリセリン舌下錠もあまり効果が期待できない場合もあります。
なお、痛みの発作が起こらずに心筋梗塞に進行する無痛性心筋梗塞では、心不全の症状が起こってようやく判明する場合もあります。

心筋梗塞の前兆は
どのようなもの?
発作が起こったら早急に
救急車を呼んでください

心筋梗塞の前兆はどのようなもの? 発作が起こったら早急に救急車を呼んでください心筋梗塞を発症した方の4割程度が命を落とすとされていますが、心筋梗塞で入院した方の院内死亡率は1割以下であり、入院前に命を落とす方がほとんどだと分かります。したがって、心筋梗塞発作が生じたら早急に救急車を呼び、近くにAEDがあればすぐに使用してください。なお、それでも命を落とすこともあるので、お気を付けください。
心筋梗塞を発症した場合、半分くらいの方は発作が生じる前に前兆の自覚症状が起こると言われています。そのため、前兆の症状があれば循環器内科に相談することで、将来的な心筋梗塞の発症を防ぐことに繋がります。以下のような前兆症状があれば、なるべく早めに受診してください。

心筋梗塞発症前にある
前兆の自覚症状

  • 胸焼け
  • 胸痛、胸の締め付け感や圧迫感
  • 肩・腕・顎・歯の痛み
  • 胸痛などの症状を頻発する
  • 痛みが数分くらいで落ち着く
  • 坂道や階段を上る際に症状が生じやすい

心筋梗塞と虚血性心不全

心筋梗塞と虚血性心不全虚血とは血液量が足りなくなった状態のことで、心不全とは心臓の機能が低下して全身で使う血液を届けられなくなっている、もしくは血流が停滞している状態のことです。虚血性心不全とは、心臓から届ける血液量が不足する、もしくは末梢血管から心臓に血液が戻ってくる力が低下している状態のことです。労作時の息切れなどは血液の循環が足りなくなることで生じ、むくみは心臓に血液が戻ってくる力が低下することで生じます。心不全は疾患ではなく状態を指し、心不全を引き起こす疾患としては狭心症/心筋梗塞、弁膜症、心筋症などが挙げられます。
無痛性虚血性心疾患では、心筋が部分的に壊死した心筋梗塞状態になっていても、自覚症状が起こらずに心不全になってようやく心筋梗塞が見つかる場合もあります。

虚血性心不全の
代表的な症状

  • 疲れやすい
  • 倦怠感
  • 少し歩いただけで息切れして、少し休憩すると落ち着く
  • 夜間頻尿
  • 下肢のむくみ

虚血性心不全の治療

心筋虚血の解消を中心に、心不全症状に応じた治療を実施します。例えば、動脈拡張薬で血流を促して心臓が血液を届ける負担を軽くする、利尿薬で過剰な体液量を少なくして負担を軽くするなどの治療を実施します。また、むくみが生じている場合は利尿薬が有効です。交感神経遮断薬は、心不全が生じている際に自律神経が過度に反応することを抑制する効果が見込めます。

心室細動・致命的不整脈
について

AED(自動体外式除細動器)心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患では、突如として倒れて、意識を失って呼吸が止まる心室細動が生じる場合があります。心室細動は、命を落とすリスクが高い致命的不整脈であり、心臓マッサージ(胸骨圧迫)を実施し、AED(自動体外式除細動器)などを使った迅速な対応が求められるため、救急車を呼んでください。
心室細動は、心筋梗塞や狭心症の発作として生じる場合があり、心筋梗塞の既往歴があれば発作を起こしていない時でも急に生じる場合があります。

心筋梗塞の治療

冠動脈の閉塞の原因となっている血栓を取り除くために、tPAなどの血栓を血栓溶解薬の注射で治療する薬物療法、カテーテルを使用して閉塞を改善する冠動脈血行再建法(カテーテル・インターベンション)、外科的治療として冠動脈バイパス術などを行います。
冠動脈血行再建法では、冠動脈の入口まで細いチューブ状のカテーテルを血管に入れ、バルーン(風船)を使って血管を広げます。閉塞の再発を防ぐために、筒状の金属のスタントを挿入する場合もあります。最近ではスタントに狭窄の再発を防ぐお薬を塗ったものを使うこともあり、狭窄や閉塞の再発を防ぐことに繋がります。なお、術後はこまめに検査を受診し、狭窄が再発していないかきちんと確認することが重要です。
冠動脈バイパス手術は、薬物療法で満足な効果が期待できず、冠動脈血行再建法も難しい場合に実施されます。冠動脈で狭窄・閉塞した場所を通らないように自己血管でバイパスを形成し、心筋に必要な血液を送ります。