⼿⾜が冷える
(末端冷え性)
体温はそこまで低くないのに、体中に熱を届ける血液が手足など身体の末端までしっかりと行き届かず、手足の指先や足底が冷える状態を末端冷え性と呼びます。女性(なかでも痩せ型の方)が発症しやすく、靴下や手袋で寒さ対策をしたり、運動などで身体を温めてもなかなか温まらないです。
⼿⾜が冷える原因は
閉塞性動脈硬化症?
閉塞性動脈硬化症
足の血管に生じる動脈硬化を閉塞性動脈硬化症と呼びます。動脈硬化が進行すると、文字通り動脈血管が硬化し、柔軟性が損なわれ、血液の正常な流れが妨げられ、複数の異常が生じます。足は運動時に通常の10倍ほどの血液を利用しますが、動脈硬化によって血流が不足し、筋肉に乳酸という疲労物質が蓄積して足の痛みが生じます。坂道や階段を登る際に足に痛みが現れる場合は、閉塞性動脈硬化症の可能性があります。足の動脈硬化が認められると、心臓や脳でも動脈硬化が発生する可能性が70%あり、足の痛みを感じた場合は、早めに専門医に相談し、最適な治療を受けることで、心臓や脳で深刻な発作を予防できる見込みがあります。
その他の原因
血液の循環の悪化
体中の熱は血液によって届けられます。したがって、手足への血液の循環=めぐりが悪化すると体中にしっかりと熱が行き渡らずに冷えやすくなります。
動脈硬化
加齢、喫煙、糖尿病、高血圧、脂質異常症などによって動脈硬化が進行すると、血管が硬化して内部が狭窄します。手足の先に流れる血管は細かく分岐していますが、動脈硬化が進行すると細い血管が閉塞して、循環が悪化します。
心臓病
心臓は体中に血液を行き渡らせるポンプのような機能を持っています。心筋症や弁膜症などで心臓の働きが弱まると血液の循環が悪化して、手足までしっかりと血液が行き渡らなくなるため、冷えが起こりやすくなります。少し動いただけで息切れする、むくみやすいといった方は心臓病の疑いがあるため、一度検査を受けることをお勧めします。
リウマチ、膠原病
リウマチや膠原病(自己免疫疾患)などが原因で細かい血管で炎症が生じ、手足まで血液が行き渡らなくなります。特に、緊張した際や冷たくなった際に手指が青白くなる方(レノイー現象)は、膠原病の疑いがあります。
女性ホルモンによる影響
出産、月経、閉経などによって女性ホルモンのバランスが乱れると、自律神経も乱れて血液のめぐりが悪化し、冷えが起こりやすくなります。
自律神経の乱れ
私たちには温度調節機能が備わっており、自律神経によってコントロールされています。
しかし、自律神経が失調すると、寒くても熱を生成できない状態に陥ります。また、寒い時は手足の血管が収縮することで、中心部からたくさんの血液が行き渡るようにコントロールします。自律神経が失調すると、気温が上がっても血管が拡張せず、血液の循環が悪化した状態が長引いて末端冷え性が起こりやすくなります。
基礎代謝の低下
身体の場所ごとの基礎代謝は、心臓が4%程度、脾臓が6%程度、腎臓と胃腸がそれぞれ8%程度、肝臓が12%程度、筋肉が38%程度、その他が約24%となっており、筋肉が大部分を占めています。そのため、筋肉量が減ると熱の生成量も減少します。
体重に対する筋肉量は、男性が40%程度である一方で、女性は36%程度とされています。したがって、筋肉量が少ない女性の方が、男性よりも冷えが起こりやすいと考えられます。
手足の冷えの対策
衣類の工夫
ストッキングやスカートなどの女性の衣類は保湿性が高くなく、薄着をする方も多いため冷えが起こりやすいとされています。
つま先や指先などの身体の末端で冷えが起こる方は、カイロで温めたり、靴下を重ね履きしても、体中の交感神経の緊張が弛緩しづらく、血管が拡張しないために冷え性を解消するのが難しいものです。
下着は胸、腕、お腹、背中をカバーする面積が広く、吸湿性が高いものを使うことをお勧めします。体幹部の奥深くを温めると、熱放散が増加して交感神経の緊張が弛緩しやすくなり、身体の末端の血流が増加して冷えの解消に繋がります。
入浴で温める
入浴は身体を温める上で有効です。半身浴やシャワーでは体中をしっかりと温めることが難しいため、全身浴を推奨します。
冷え性の方は血管が収縮していることが大半であるため、40℃以下のぬるま湯に10〜30分くらい浸かると良いです。お湯を40℃以下にすることで副交感神経系の働きを促進し、血管が拡張しやすくなります。
運動・筋力トレーニング
体の約4割の熱は筋肉から生成されます。したがって、筋肉量は身体で生成される熱と深く関係しており、筋力トレーニングによって筋肉量がアップすると冷えが起こりづらくなります。
また、手足など体中の毛細血管は加齢によって量・質どちらも少しずつ減少し、冷えが起こりやすくなりますが、トレーニングによって筋肉量の他にも毛細血管の数が増加するためお勧めです。
身体を温める食事
常温以上のものを摂取することは、身体の中から冷えを防ぐ方法として有効です。それだけでは満足いく効果が得られない場合は体温以上のものを摂取しましょう。
漢方薬
身体の働きを促進して症状を抑制する漢方治療は、熱を生成する機能が低下した冷え症の治療に効果的です。