当院では嘔吐症状が強い方は救急車対応をお願いしております。嘔吐後も吐き気が強い方は入院加療になることが多いからです。
また当院では予約の患者様優先にお受けしているため、どうしても瞬時に対応できない事情があります。
トイレの数も限りがあるため、嘔吐が頻回の方は救急病院の受診をご検討ください。
胃腸炎とは?
食べ物は口の中から入れるとどのように通過するかというと
食道 → 胃 → 十二指腸 → 小腸 → 大腸 → 肛門
といった流れになります。胃腸炎とはこの胃から大腸の間に炎症が起こった場合をいいます。
症状としては、
- 腹痛
- 嘔気、嘔吐
- 下痢
- 発熱
などが一般的です。お腹が痛くて病院にいったら胃腸炎と診断を受けた人は多いのではないでしょうか?
これら一般的な症状に加えて
- 粘血便、血便
- 悪寒
- 腹部の張り
- 手足の痺れ
- めまい、ふらつき
などを起こす方もいます。この胃腸炎ですが、原因として一番多いがばい菌の感染です。ばい菌といっても主にウィルスと細菌の2種類が考えられます。具体的な種類としては
※スクロールで全体を表示します。
病原体 | 原因 | 潜伏期間 | 流行時期 |
---|---|---|---|
インフルエンザB | 空気感染 | 2,3日 | 冬 |
ノロウィルス | 牡蠣などの二枚貝 | 1から2日 | 冬 |
ロタウィルス | 汚染された水 | 1から2日 | 冬 |
サポウィルス | アサリなどの貝 | 1から2日 | 常時 |
アデノウィルス | 汚染された水 | 2から3日 | 夏 |
カンピロバクター | 鶏肉 | 1週間前後 | 夏 |
腸管出血性大腸菌 | 生肉など | 1週間前後 | 夏 |
サルモネラ菌 | 卵や鶏肉 | 6から72時間 | 夏 |
ウェルシュ菌 | 煮込み料理など | 6から18時間 | 常時 |
ブドウ球菌 | 手についた場合 | 3時間以内 | 常時 |
腸炎ビブリオ | 魚介類 | 1日以内 | 夏 |
などなど代表的な物だけでもこれだけあります。ここで伝えたいのは感染したばい菌によってウィルスや細菌という分け方だけでもなく、
- 原因食物
- 潜伏時期
- 流行時期
などなどかなりばらつきがあります。極論ここに書いた以外でも、食べ物に他のばい菌が入って摂取してしまえば、どんなウィルスや菌も原因になりえます。またここまで食べ物が原因の経口感染について記載しましたが、胃腸炎の原因が全て食べ物からのわけではありません。
- 空気感染・・・感染した人の吐物などから移る場合
- 接触感染・・・感染した人が触ったドアノブや食器、タオルなどから移る場合
などばい菌は食べ物以外からも色々な感染経路で感染することがあります。インフルエンザなどは発熱が強く出ますが実は胃や腸に空気感染などで入ってくれば胃腸障害を起こします。このように食べ物以外でも胃腸炎は起こりえるのです。
よく、
- 賞味期限が切れたパンを食べた
- 今日食べたお肉が生焼けだった
- 昨日食べたお寿司が怪しい
など思い当たる食べ物が出てくると思いますが、あくまでも疑わしいまでしか言えません。誰かに移されたり、接触物を通して手から感染した場合もあるので、一概に食べ物だけ絞ることはできないからです。
また、ばい菌以外にも様々な要因が胃や腸を刺激します。
- 冷房などの冷たい空気
- アニサキスなど寄生虫
- アルコールなどの化学物質など
- キノコなどの自然毒
- などなどお腹の痛みには様々な原因が加わるので注意が必要です。
当院の胃腸炎の診察に関して
お腹が痛くなったり、下痢になったら胃腸炎と診断された方は多いと思います。一方で医師からすると胃腸炎と確定診断するのって凄い難しいです。
胃や腸に炎症があるかどうかは、
- 腹部造影CT
- 胃カメラ、大腸カメラ
などなどを施行して実際に胃や腸に炎症があるかどうかを確認しないと確定診断できません。では全お腹が痛い、嘔気がするなど症状あった全ての人にこのように検査する必要があるのでしょうか。いえいえ、実際に胃腸炎の多くは数日で治ることが多いため、全ての人に検査する必要は全くありません。一方でお腹の痛みや、嘔気が本当に胃や腸に炎症があるのか?他の臓器に炎症はないのか?そういった観点で医師は主に診察していきます。
お腹って実は色々な臓器がある部位で非常に診断が難しいです。
具体的には
- 肝臓
- 膵臓
- 胆のう
- 腎臓
- 尿管・膀胱
- 子宮・卵巣
などなど多岐にわたります。問診する際重要なのは、胃腸炎以外の疾患があるかどうかです。
- いつからどのような症状があるか?
- 他に誰か同じような症状な方はいないか?怪しい食べ物が思い当たらないか?
など胃腸炎の可能性があるかどうかの質問は当然のこと・・・
- 妊娠の可能性はあるか? → 子宮外妊娠など
- 日常的にアルコールは飲んでいるか? → 肝炎・膵炎など
- 血尿などは出ていないか? → 尿管結石
など一見、胃腸炎とは関係ない質問も、胃腸炎以外の鑑別が必要なためです。そして胃腸炎よりも実はこれらの疾患の方が見逃すと後々悪化しやすく重症化なりやすいのです。また嘔気・嘔吐に関しては、非常に注意する必要があります。食べ物の通り道の炎症以外にも、
- 髄膜炎・脳出血などの脳の疾患
- メニエールなどの耳鼻科疾患
- 尿毒症・敗血症などの全身に毒が回った状態
等、重篤な疾患が隠れている可能性があります。そのため、
- 頭痛などの症状がないか?
- めまいや耳なりなどの症状はないか?
- 大きな既往歴はないか?
等、一見するとお腹に関係ない質問もこれらの怖い病気を鑑別するために重要な問診となっています。このように胃腸炎の診察で重要なのは、『本当に胃腸炎かどうか?』以上に『他に重篤な病気がないか』どうかを問診することです。
問診でこれらの質問した次に、触診や聴診することが多いと思います。
- お腹を触って何を確認しているんだろう?
- 痛いから触らないで欲しいのに・・・
- 強く押されたら下痢が出ちゃわないか心配
など思った方はもしかしたらいるかもしれません。実際に腹部の触診ではどの部位に、どのような痛みや所見があるかを確認しているのです。先ほどお腹の中は胃腸以外にもたくさんの臓器があると伝えました。ただし各々の臓器だいたいの部分が決まっているため触診でどこが痛いかで胃腸炎以外に何が考えられるかを絞っていきます。具体的には
- 上腹部圧痛→胃炎、胃潰瘍、虫垂炎、逆流性食道炎、心筋梗塞
- 右上腹部→十二指腸炎、十二指腸潰瘍、肝炎、胆嚢炎、胆石
- 右もしくは左側腹部→尿管結石
- 下腹部→腸炎、卵巣捻転、子宮外妊娠
- 右下腹部→腸炎、虫垂炎
などなど胃や腸の炎症以外にもいろいろな疾患が鑑別に挙がります。ここに挙げたのは一部であり、全て挙げると枚挙がないほど多くの疾患の可能性が腹部症状には潜んでいます。
この中で触診で特に重要なのが虫垂炎になります。虫垂炎とはいわゆる盲腸です。身近な方で手術になった方もいるのではないでしょうか?虫垂炎は軽度であれば抗菌薬などで散らす(治す)ことができる病気ですが、重度ですと緊急手術が必要になる病気です。この虫垂炎ですが、造影腹部CTで精査しないと確定診断ができないのですが、初期だと見過ごしが多い病気です。頻度もある程度ある上に、見過ごしやすい病気として有名な病気の一つでもあります。そのため、触診の時にまず虫垂炎でないかどうかが一つの見極めになります。もともと虫垂は右下にあるため右下腹部の方は注意が必要ですが、初期は上腹部に痛みが出ることが多いため注意が必要です。痛みが上腹部から右下腹部に移動してきたらかなり怪しくなります。
この虫垂炎ですが、
- マックバーニー点(en:McBurney’s point)
- ランツ点(Lanz)
- キュンメル点(Kummel)
など特徴的な部位を押すことで、疼痛を訴える所見があります。
一方で胃腸炎自体も触診は非常に重要です。胃腸炎から腹膜炎といって胃腸からさらに外に炎症が派生する病気です。腹膜炎まで派生すると、場合によっては消化管穿孔といって胃や腸に穴が開いている可能性もあり緊急を要する非常に危険な状態になります。
この腹膜炎ですが、
- 筋性防御
- Blumberg兆候
という所見が重要になります。筋性防御は軽くお腹を触っただけでも板のように固くなる状態です。筋肉質の男性の方は正常の場合でも腹筋が鍛えられて固いので、膝を曲げてなるべくリラックスした状態で精査します。
Blumberg兆候はお腹を強く押したときと離したときで、素早く離したときに痛くなると兆候があると判断します。上記のように虫垂炎や腹膜炎が疑われる場合は緊急で総合病院へ案内する場合もあります。このように触診は患者様をむやみやたらに痛めるために行っているのではなく、重症疾患かどうか見極めるために行う診察です。ぜひご協力いただければと思いますのでよろしくお願いします。
胃腸炎の当院の検査について
(1)腹部レントゲン写真
当院では
- 腹部CT
- 胃カメラ、大腸カメラ
などの設備はありません。
必要である場合は、総合病院へのご案内となります。一方で腹部のレントゲン写真は撮影できます。胸部はレントゲン写真を撮影されたことは健康診断等で多いかと思います。でもお腹の中の状態を素早く確認するには優れた検査です。
腹部レントゲン写真にて
- 腸管ガスの状態
- 便塊の量
- 結石の有無
- 腸管外ガスの存在の有無
などを確認します。
腹痛の一番の原因って実は胃腸炎ではないのです。一番多い原因としては便秘があります。便塊が固い、詰まっているなどで腸を圧迫することで腹痛となります。一方で便秘って人によっては医師に言いづらいこともあるかもしれません。また自覚がなくても意外と便塊が多いことがあります。便秘のせいで痛みがあるかどうかということは非常に重要になります。便秘に対しては下剤などで出す必要があります。一方で胃腸炎などはブスコパンといったお腹の動きを止めるお薬を処方することがしばしばあります。このお腹の動きを止めるお薬を便秘に使用すると便秘がもっとひどくなってしまいます。そのため腹痛=胃腸炎と安易に決めつけて治療するのは逆効果になってしまうこともあります。
また、お腹のガスの状態が瞬時に判断することがとても重要です。大腸ガスは消化する際発生するもので正常でもある程度はあります。一方で小腸ガスは、正常の場合ほとんど認めません。そのため、小腸ガスが多発していたら腸炎の可能性が高くなります。
また大腸ガスも、非常に重要な所見です。
- 大腸が拡張
- ニボーの有無(腸管内にガスの他に液体がたまり、鏡面像として水平に映し出されたもの)
などを確認します。
特に二ボーがある際は、腸閉塞(イレウス)といって腸管の動きが悪くなったり、一部閉塞したりして詰まってる可能性があります。この腸閉塞は、程度にもよりますが入院で加療することがあるため注意が必要です。また腸管外ガスが多量に発生していると腹部レントゲンでも確認できるようになるのですがこの状態は非常に危険です。胃や腸管に穴が開いてしまっていることを意味するからです。この場合は緊急手術が必要なることが多いです。このように腹部レントゲン写真は、胃腸炎かどうかある程度判別できるとともに、便秘などよくある疾患や、イレウスや腸管穿孔といった怖い病気まで瞬時に確認することができます。当院では患者様の症状に合わせてレントゲン撮影をご案内しておりますのでよろしくお願いします。
(2)採血検査(炎症反応迅速検査)
次に胃腸炎が疑われている方は採血で精査も可能です。採血してもしなくても処方される薬が同じじゃないか?と思われる方もいるかもしれませんがそれは違います。
前述のように胃腸炎には
- 細菌性
- ウィルス性
の2種類があります。
実はどちらかによって治療薬が違うのです。細菌性の胃腸炎であれば、抗菌薬(抗生剤)の投与が必要になります。抗菌薬を投与しないとドンドン細菌が繁殖して悪化する可能性があるためです。一方でウィルス性の場合不用意に抗菌加療はできません。ウィルスは抗菌薬が効かないからです。そればかりか、お腹の中の善玉菌、ビフィズス菌などといったお腹に良い菌ばかりを倒してしまい逆に悪化する要因になるのです。そのため、細菌性かウィルス性かどちらかによって抗菌薬が必要かどうか変わってきます。どの菌が原因か確定するのには便を培養する必要があります。当院でも施行できるのですが、その日のうちに確認できず、1週間程度時間を要するため症状が治らない人限定で行う方が多いです。
一方で当院では
- 血算(赤血球、白血球、血小板)
- CRP
といった炎症反応が採血後10分前後で結果を出すことができます。
この中で白血球という数値が非常に重要になります。白血球は細菌がいたときに主に上昇することが多いです。つまり採血することで、ある程度細菌性かウィルス性か確認することができ、抗菌薬の必要性を決めることができます。またCRPとは細菌性、ウィルス性限らず炎症反応が強さを表しています。白血球合わせて数値が非常に高い時は、重度の胃腸炎もしくは、緊急性を要する疾患の可能性が高くなります。その数値に合わせて総合病院に緊急受診すべきか判断するのに非常に重要な数値になります。先ほど緊急性が高いといった虫垂炎も手術するかどうかこのCRP、白血球を一つの参考値にするほど重要な値です。なお腹痛は胃腸炎に限らず、様々な臓器の疾患が考慮されます。
症状が治らなかった場合、
- 胃腸炎がくすぶっているのか
- 他の疾患なのか
が非常に重要になります。そのため当院では迅速に検査できる炎症反応以外に、全身状態を採血で確認しておきます。
- 肝機能障害で上昇するAST、ALT
- 胆のう障害で上昇するγGTP
- 膵臓障害で上昇するAMY
- 腎機能障害で上昇するBUN、Cre
などなど一般的な項目を精査しておくことで患者様が症状が治らなかった時にスムーズに治療できるように検査しておきます。緊急性が高い場合は当院からご連絡差し上げる場合もあるのでよろしくお願いいたします。
(3)便潜血・便培養・ノロウィルス精査
便が真っ黒、真っ赤など所見がある場合は、本当に出血しているかどうか確認することが必要です。当院では先ほどの採血で出血による貧血があるかどうか当日確認すると同時に本当に出血しているのか便を精査することができます。結果は後日になりますが、便から血が出ているかどうか調べたい人はおっしゃっていただければと思います。便の培養が確実に原因を調べるのに適した検査です。ただし、検査結果が出るまで日数を要します。
検査している間に治ってしまう人がほとんどのため、
- 症状がなかなか治らない
- 家族が特殊な菌に感染して自分も疑う
- 粘血便など普通の胃腸炎とは違う症状
などの方は精査するか考慮します。なお冬の時期になるとノロウィルスの検査を希望される方がいます。ノロウィルスは保険診療で行う場合は、
- 3歳未満もしくは65歳以上の方
- 悪性腫瘍の診断を受けている方
- 臓器移植後の方
- 免疫抑制や抗悪性腫瘍剤、もしくは免疫抑制効果のあるお薬を服用中の方
といった制限があります。そのため、これ以外の方(30,40代で既往歴も特にない方)は診察代も含めて全て自費になるのでご注意ください。ノロウィルスの検査は294点のため、自費だと検査費用だけで2940円となります。ただしノロウィルスは前述したウィルスになるため、確定診断が受けたとしても特効薬があるわけではありません。だからこそ保険診療で多くの方が認められてないのです。またノロウィルスじゃないから他者に移らないと証明されたわけではありません。基本的に腹部症状がある方は、他者に移るものとして対応をお願いしております。
当院の胃腸炎の治療について
当院は軽症である方は、内服薬で治療いたします。
ここまでは、他のクリニックでも対応している治療かと思います。一方で前述したように細菌性かウィルス性かが重要になります。どちらか確認せずに抗菌薬を投与すると悪化するリスクがあるため、逆に抗菌薬などの治療を希望される方は本当に必要か採血を提案させていただくことがあります。なお、嘔吐や下痢はそもそもばい菌を外に出そうとしている防御反応です。嘔吐は食べたものが逆流して出てくるため、積極的に胃の薬や吐き気止めを使用して、止めることが多いです。一方で下痢止めは注意が必要です。下痢をすることで外に出そう、出そうと一生懸命になっているのにそれをわざわざ下痢止めで妨害すると、薬が効いている間は治ったように感じますが、その間ばい菌が繁殖してしまい結果として、治りが長引いてしまいます。実際に多くの下痢止めが添付文章にて感染性の下痢に対して適応を禁忌にしている位です。下痢があると仕事にならない、外に出れないという気持ちはよく分かりますが、下痢している段階で他者に移すリスクがあります。そのため、急がば回れで下痢に関しては整腸剤内服で安静にすることをお勧めしております。
また症状が強い方は点滴加療をお勧めしております。胃腸の機能はそもそも食べたものを消化・吸入する機能です。そのため嘔気や下痢があると、薬が十分に吸収されない可能性があります。特に嘔気の場合は、飲んだものがそのまま出てくるため全く意味をなさないことも多いです。そのため嘔気がある場合、当院では積極的に点滴加療をご案内しております。
口から飲めなければ、別の経路で栄養や吐き気止め・痛み止め・解熱剤を入れることで、素早くそして効果的に薬の力を発揮することができます。当院では点滴するときに針を刺した際に一緒に採血することで患者様に痛い思いを何度もしないように心がけております。また点滴室では5名ほど対応できるスペースを確保しているため、多くの方が対応できるようにしています。カーテンで仕切るようにしているため、プライバシーにも配慮しております。採血結果が前述したように当日で出るため、その場で細菌性かウィルス性かある程度判断いたします。細菌性が疑わしければ点滴で抗菌薬を投与することも可能です。
このように当院では、
- 吐き気止め(プリンペラン)
- 抗菌薬(ロセフィン、クラビット等)
- 解熱薬(アセリオ)
- 痛み止め(アセリオ、ブスコパン、オメプラゾール)
といった薬をご準備しています。この治療薬は総合病院の救急外来でもほぼ同じような治療になります。そのためこの点滴でも改善しなければ基本的には入院を検討するべき症状の場合が多いです。当院では内服薬のみから点滴加療まで幅広く準備しております。
胃腸炎の方の食事および注意点
よく嘔吐や下痢が続く方にどのような食事が良いか聞かれることがあります。基本的には消化の良いものが重要です。
- 小さい
- 柔らかい
- 油の使用量が少ない
物が適切です。おじややうどんなどが良いとされています。また良くないものとしては、
- 冷たいもの
- 辛い物(香辛料などの刺激物)
- 肉類など
は避けた方が良いとされております。もちろんアルコールなどは刺激になるので、辞めておきましょう。一方で嘔気が強い、食欲がないといった方は食べ物を見ただけで気持ち悪くなるかもしれません。その場合は、ポカリスエットなどのスポーツ飲料を取るようにしましょう。嘔吐や下痢で失われるのは水分だけでなく、栄養や電解質などといった体に重要な物質も多く失われます。そのためお茶や水ではこれらが補えません。これらを補えるのに適したのが、スポーツ飲料です。逆に言えば食べられなくてもスポーツ飲料さえしっかり飲めれば脱水症状を防ぐことができます。
また細菌性にしてもウィルス性にしても症状がある間は人に移る病気と考えて対応することが大切です。ノロウィルスの検査が陰性だから一安心される方がいらっしゃいますが、ノロウィルス以外でも他者に移る可能性は十分にあります。そのため、仕事や学校を休むのはもちろんのこと、嘔吐物や排泄物などの処理は一緒に住んでる方も素手でやらず手袋などで対応しましょう。また直接対応しなくてもドアノブやタオルなど触ったところから移る可能性があるため手洗いはこまめにするように気を付けてください。
嘔吐が続く方へ
最初に記載させて頂いたのですが、嘔吐症状が強い方は状況によっては総合病院の受診をご案内しております。基本的に30分から1時間嘔吐が我慢できないような場合は入院になることが多いです。嘔吐が強い方は来院がそもそも大変だと思いますし、待ち時間も難しいかもしれません。当院では予約患者様をご優先して診療しております。そのため、予約患者様の後でも対応可能なレベルの症状であればよいのですが、その目安がMAX1時間程度と考えております。トイレの数も待合室に1つ、検査用のトイレが1つと計2つと限りがあります。一人でも多くの患者様を助けたいのですが、症状が強いから割り込みというわけにはなかなかいかないので、一刻も早く診て欲しいという嘔吐が止まらない場合は救急車でも良いと思います。当院来院後、総合病院紹介だと患者様自身にご負担になるため嘔吐した後も吐きそうだという場合はぜひ総合病院をご検討いただければと思います。
まとめ
- 当院では、腹痛、下痢、嘔吐症状がある方に胃腸炎以外の鑑別疾患かどうか問診、触診で精査します。
- 腹部レントゲン写真で胃腸の動きを確認して治療方法を決定することができます。
- 採血で10分前後で細菌性かウィルス性か判断することができます。
- 症状が改善しない場合も踏まえて、多臓器の炎症がないか採血で確認しております。
- 症状が強い方は点滴加療で早急に症状を改善することに努めます。
胃腸炎はありふれた病気であると同時に、他の疾患の鑑別が難しい病気でもあります。
胃腸炎と思ってたら、
- 虫垂炎だった
- 肝炎だった
- 膵炎だった
等は日常茶飯事です。そのため気持ち悪い、お腹が痛いのをなんでもかんでも胃腸炎と決めつけて治療するのは非常に危険です。そのため当院では胃腸炎かどうかまたその重症度はどうか多角的に検査することも可能です。一般的に処方される胃薬や整腸剤は薬局でも購入できるものです。そのためその先の治療もできるように当院では準備をしております。当院で改善しない場合は入院加療が検討すべきところまで治療できますので、腹部症状がある方はぜひいつでも来院してください。ただし嘔吐症状が強い方は緊急性が高いため、総合病院での治療をお願いしておりますのでご了承お願いします。