気管支喘息とは?
気管支喘息って聞いたことある人は多いと思います。でもどんな病気と聞かれて説明するのは凄い難しい病気です。実は私も若手の医師や製薬会社の方の勉強会で、導入の時に必ず『そもそも気管支喘息ってどんな病気?』ってところからお話します。
- ヒューヒューゼーゼーと息苦しい病気
- アレルギーで咳が出る病気
- 慢性的に咳や痰がでる病気
色々な回答が出てくると思います。なお気管支喘息のガイドラインでは喘息は下記のように定義されています。
気管支喘息は『気道の慢性炎症を本態とし、変動性を持った気道狭窄(喘鳴、呼吸困難)や咳などの臨床症状で特徴づけられる疾患です。気道炎症には好酸球、好中球、リンパ球などの炎症細胞、加えて気道構成細胞、および種々の液性因子が関与します。自然にあるいは治療により可逆性を示し、気道狭窄、咳は気道炎症や気道過敏性亢進によるものです。』
難しい単語が並んで逆にイメージしづらくなりますよね。実はこれは一部を抜粋したもので、もっともっと定義は長くなっております。例えば好中球というのは主に細菌がいるとあがる炎症細胞です。つまり揚げ足をとろうと肺炎の炎症でも気管支喘息といっていいじゃないかと言われないために、可逆性や気道過敏亢進など小難しい単語をドンドン付け加えたのです。その結果、定義も長くなってしまい難しい病態となってしまいました。
気管支喘息は実は全世界でまだ解明されていないことが多い病気です。一昔前はアレルギーが関与していると言われていましたが、現在解明が進むにつれてアレルギー以外の炎症も関与することがあると発見されております。そのため気管支喘息の中にも何パターンかあるのではというのが通説ですが、何パターンあるか、どのように分けるかに関しては結論が出ていません。
一応わかりやすく書くならば、気管支喘息とは持続的に炎症が起こることで、気道が過敏になって、咳、痰、息苦しさ、さらには喘鳴(ヒューヒューゼーゼー)する病気としますが、ここに書いた炎症とは色々複雑な状態だと思っていただければと思います。
気管支喘息の診断に関して
先ほど気管支喘息は定義が難しいことを書きましたが、どんな病気にも診断基準というものがあります。
気管支喘息にも当然あるのですが、
- 呼吸困難、喘鳴、胸の息苦しさ、咳の反復
- 可逆性の気流制限
- 気道過敏性の亢進
- 気道炎症の存在
- アトピー素因
- 他疾患の除外
の6つを参考にするように記載されています。さてこの中の何項目が当てはまれば気管支喘息と診断してよいと思いますか?
正解は
- 呼吸困難、喘鳴、胸の息苦しさ、咳の反復
- 可逆性の気流制限
- 気道過敏性の亢進
- 気道炎症の存在
- アトピー素因
- 他疾患の除外
上記、赤で示されたものは、診断に重要であり、④がアレルギーの炎症であれば診断価値が高い、さらに⑤は喘息の診断を支持するとあります。つまり何個当てはまれば気管支喘息であるとは言えないのです。
さらにこんな一文もガイドラインで示されています。気管支喘息は多様性があり、臨床経過も大きく患者ごとに異なり、特徴的な兆候を欠くことも少なくないです。つまり、気管支喘息は参考項目6項目が当てはなまらなくても可能性があるということです。
このように気管支喘息は、
- この特徴、この検査でこの結果なら絶対に気管支喘息だ
- この特徴、この検査でこの結果なら絶対に気管支喘息ではない
ということが言えない非常に難しい病気なのです。
上記示した特徴がそろっていれば診断も簡単ですが、特徴がなくても気管支喘息を除外してはいけません。そのため呼吸器専門医による詳細な診察が必要になる病気です。
当院の気管支喘息の診断に関して
気管支喘息の問診・聴診に関して
先ほど示したように気管支喘息は、病態も診断も非常に難しい病気です。そのため、とりあえず咳が続いているというだけで気管支喘息と診断されることも少ないです。しかし気管支喘息は、一生付き合っていかなければいけない病気です。気軽に気管支喘息と診断されてしまうと、誤診だった場合意味のない治療を続けることになります。
さらに気管支喘息と診断されて
- 気管支喘息の発作が試合中起きないという診断書がなければサッカーの試合に出させない
- 気管支喘息であれば、痛み止めは出せないから我慢しないといけない
- 気管支喘息と診断されてから、いつも不安感で胸が苦しい
など実際は誤診だったのに日常生活に影響があった人も多数呼吸器内科医としてみています。そのため当院では、『よくわからない病気だから適当に治療しよう』ということは一切なく、呼吸器内科専門医・アレルギー専門医の下、『難しい病態だからこそ、しっかりと診断していこう』というスタンスで診療しております。
まず大切なのが問診になります。
- 咳が出てきたきっかけ(風邪の後、掃除した後など)は何かあるか?
- 痰や鼻水は出てくるか?
- もともと咳や痰は出やすいか?
- アレルギー:花粉症や食べ物、さらにはロキソニンなどの薬剤でアレルギーはあるのか?
- アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎などアレルギー疾患は合併しているか?
- 特定の場所(室内、野外、古い建物)や特定の時間(早朝や夜間など)に咳はあるのか?
- ペットなどは飼っているか?
- 運動やストレスがかかった時、天候が悪い時など特殊な状態で出てくるか?
- 家族に気管支喘息と診断された方はいるのか?
など気管支喘息の可能性を問診で探っていきます。また同時に他の疾患の除外が非常に重要になります。
そのため上記以外の質問でも、
- 熱など出たか?風邪などひいたか→気管支炎・肺炎・感染後咳嗽
- タバコを喫煙、もしくは以前に喫煙していたか?→肺気腫
- アルコールを飲むと発作が起きやすいか?食後は関係あるか?→逆流性食道炎
- ストレスや疲労で発作が起きやすいか?→心因性咳嗽
- 他の疾患で薬剤など何か飲んでないか→薬剤性咳嗽
などなど他の病気の可能性も探っていきます。咳の患者様=気管支喘息と一辺倒にならないように様々な可能性を考慮しながら問診に当たらせていただきます。
問診の後は聴診にて喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼー)する音があるかどうか確認します。この聴診が非常に重要になります。気管支喘息の手前の咳喘息かどうかは喘鳴があるかどうかで診断します。つまりヒューヒューゼーゼーしていれば、咳喘息の可能性が無くなるのです。一方で大切なことは喘鳴があるからと言って気管支喘息と確定することはできません。喘鳴があるということは、気管支が狭くなっているということしか言えません。気管支が狭くなる病気は気管支喘息以外にも
- 気管支ポリープ
- COPD(肺気腫)
- 心不全
など多岐にわたります。そのため喘鳴がある場合でも、検査をぜひ当院ではお勧めしております。
気管支喘息の診断の検査について
問診である程度可能性を探った場合は、まずレントゲン検査をご案内することが多いです。レントゲンで気管支喘息が分かるのか?→実はレントゲンでは気管支喘息かどうか見分けることはできません。
それでは撮影する意味ないのでは?→いえいえ非常に重要な検査です。先ほどの診断基準で⑥他疾患の除外と記載があります。他疾患と言えば具体的にどのような疾患があるかというと、
- 上気道疾患(喉頭炎、喉頭蓋炎)
- 中枢気道疾患(気道内異物、気管支軟化症、気管支結核、サルコイドーシス)
- 気管支、肺胞の疾患(COPD、肺線維症、過敏性肺炎、肺癌、肺結核、肺炎)
- 循環器疾患(うっ血性心不全、肺塞栓症)
- 薬剤:アンジオテンシン変換酵素阻害薬が原因の咳
- その他の原因:自然気胸、逆流性食道炎、過換気症候群、心因性咳嗽
などが挙げられてます。しかしこれらの疾患を最初の診察で全て鑑別したら、時間もかかるし患者様の金銭面も非常に負担になります。これら羅列された病気全てを最初から鑑別するのではなく、まず最初に除外すべき疾患があります。
具体的には、
- 肺炎(抗菌薬を早期に投与しないと、急激に悪化する可能性があります)
- 結核(早期に発見しないと、他の人に感染してしまいます)
- 肺癌(発見が遅れると、命にかかわります)
などなど、放置しておけない病気がいくつかあります。まだまだ他にもありますが、この多くは胸部レントゲンを撮影することですぐに分かります。そのため咳が続く人は当院ではまず胸部レントゲンを撮影させていただければと思います。逆に気管支喘息と診断された方が、胸部レントゲンを撮影されず問診だけで診断されたとお話された場合、私はそもそも本当に気管支喘息かどうか疑うことが多いです。
また気管支喘息がもともとある方も、風邪、肺炎や気胸がきっかけで症状出ている方もいます。病気が一つとは限らない、問診だけの決め打ちが後々患者様の不利益になることもあるので、どのような方も胸部レントゲン撮影はお願いできればと思います。
胸部レントゲン写真で異常がない方は、いよいよ気管支喘息かどうかの検査になります。当院では気管支喘息を疑う方には呼気NO検査という検査を実地しております。
この検査は2010年頃に登場した新しい検査になります。NO(一酸化窒素)とはアレルギーの炎症(好酸球炎症)がある方に発生する物質になります。呼気に含まれているNOの量を息を吐くだけで測定するのです。ふーーっと一定の流量で息を吐くだけなので痛くも痒くもありません。
呼気NOの値が、
25以下 (小児20以下) |
アレルギーの炎症が低い |
---|---|
25以上 (小児25以上) |
アレルギーの炎症の存在が考慮される |
50以上 (小児35以上) |
アレルギーの強い炎症が存在する |
となります。そのため成人の方は25以上であれば最初の診断基準の④のアレルギー炎症のため診断意義が高いという項目に合致するため気管支喘息の診断に非常に近くなります。
- 漫然と咳が続く
- 自分が本当に気管支喘息か知りた
- アレルギー疾患がもともとあるので喘息の可能性を疑っている
どのような方もぜひ呼気NOで本当にアレルギーが敵かどうか調べてみてください。なお、当院では気管支喘息の治療前にこのレントゲンと呼気NOだけ最低でも検査をお願いしております
『昔から喘息があるから検査しなくても分かってる』という方も、実は調べてみたら肺炎があったり、呼気NOの値が非常に高くていつもの治療では治らないなど色々なことが分かってきます。また治療してから呼気NOを測定しても、呼気NOが低い場合
- もともと数値が低い
- 治療薬が中途半端に効いて呼気NOが下がった
二つの可能性が考えられます。これに関してはどちらか判断がつかなくなるので、治療を先行してしまうと治らなかった時によくわからなくなってしまうのです。そのため当院では、患者様のことを考えたうえで胸部レントゲン写真および呼気NO検査を治療を開始する前にお願いできればと思っております。
呼気NOが高い方は、次にぜひアレルギー検査をお願いできればと思っております。アレルギー原因だと分かった次は、何がアレルゲンなのか確認することで、
- 何に気を付ければよいか
- いつまで治療をすればよいか
が確定することができます。
気管支喘息のアレルギー検査は、国の方から可能性が高い物質の検査をまとめた、CAP-16鼻炎喘息の項目を調べることが多いです。具体的な内容ですが、
季節性アレルゲン
- スギ(2~4月)
- ヒノキ(3~5月)
- ハンノキ(1~5月)
- カモガヤ(5~8月)
- ブタクサ(8~10月)
- ヨモギ(8~10月)
- ガ(初夏・秋)
- ユスリカ(初夏・秋)
通年性アレルゲン
- ハウスダスト1
- ヤケヒョウヒダニ
- ネコ皮屑
- イヌ皮屑
- カンジダ
- アスペルギルス
- アルテルナリア
- ゴキブリ
となります。
季節的なアレルゲンであれば、その季節まで治療をすればとなりますし、通年性のアレルゲンであれば長期の治療で対応をすることが多いです。なお、ペットを飼っていたりとこちら以外の検査希望の方は事前に相談していただければ柔軟に対応致します。
また、気管支喘息の初期治療が効かない場合は、強いお薬を入れる必要があります。そのため、薬が投与できるかどうか腎機能や肝機能などを一緒に採血することが一般的です。また、胸部レントゲンで異常がなくても気管支炎などの可能性があるため、炎症反応や特殊な感染がないかも調べればと思います。何回も痛い思いをさせるのは申し訳ないので、可能であれば一回で当院はまとめて血液検査できればと思います。ただし、採血施行すると、3割負担の方は5000-6000円程度かかります。初診代+胸部レントゲン、呼気NO代も含めると1万を超えることが多いです。そのため採血に関しては患者様と一度ご相談してから行わせていただきます。当院に来たら、必ず採血するわけではないので、ご安心ください。患者様に合わせて柔軟に対応していきます。
当院の気管支喘息の治療に関して
喘息の治療に関しては主に2種類あります。
- 長期管理治療:喘息の炎症を抑え続けて、喘息の悪化を防ぐ治療
- 発作治療:息苦しい、咳嗽などの喘息発作時に対して、症状を和らげる治療
多くの方は(2)の発作時の治療を求めると思います。苦しくなったら、また受診すればいいやという思いの方もいるのではないでしょうか?
しかし現在の気管支喘息のガイドラインは(1)長期管理治療を非常に重要視されます。
そのためまず長期管理治療に関してみていきましょう
当院の長期管理治療
なぜ喘息では長期管理治療が必要かというと気管支喘息は、発作を起こせば起こすほど、どんどん重症化してくることが言われています。気管支の炎症を繰り返すことで気管支が肥厚し固くなることで徐々に薬が効かなくなるのです。このような状態を『リモデリング』といい、薬を何を投与しても改善せずに最終的には入院加療が必要になります。また気管支喘息は
- ストレス
- 過労
- 風邪
の3大原因が誘因となって発作が起こると言われます。これらは回避不能で急に起こりえることです。
- 受験前日に緊張で咳が出てきた。
- 旅行前なのに風邪をひいてから息苦しい。
- 仕事が忙しくなってきたらヒューヒューし出した。
重要なライフイベントに気管支喘息で障害が出たという人を数多く見てきています。こういったリスクを少しでも回避できるように長期管理がとても重要になります。そうは言っても症状がない方は治ったとどうしても考えてしまいがちです。そのため当院では症状が安定した方はまず呼吸機能検査を提案させていただきます。呼吸機能検査では、肺活量と1秒量という値を測定します。特に、気管支喘息では1秒間に1度に息がどの程度吐けるかという1秒量が非常に重要になります。気管支が炎症で狭くなるとこの値が低下するからです。当院では末梢閉塞や肺年齢まで測定し、症状がなくても今どの程度肺の状態が悪いか数値でもお示ししようと思います。少しでも、気管支喘息の長期治療のモチベーションにつなげていただければと思います。
ではどのような気管支喘息の治療があるのか、下記の表を参考にしてみましょう。
喘息の治療ステップ
※スクロールで全体を表示します。
治療ステップ1 | 治療ステップ2 | 治療ステップ3 | 治療ステップ4 | ||
---|---|---|---|---|---|
長 期 管 理 薬 |
基 本 治 療 |
ICS(低用量) | ICS(低~中用量) | ICS(低~中用量) | ICS(高用量) |
以下のいずれかを用いる LTRA テオフィリン除放製剤 ※症状が稀なら 必要なし |
以下のいずれか1剤を用いる LABA(配合剤使用可) LAMA LTRA テオフィリン除放製剤 |
以下のいずれか1剤あるいは複数を併用 LABA(配合剤使用可) LAMA LTRA テオフィリン除放製剤 |
以下のいずれか1剤あるいは複数を併用 LABA(配合剤使用可) LAMA LTRA テオフィリン除放製剤 抗IgE抗体 抗IL-5抗体 経口ステロイド薬 気管支熱形成術 |
||
追加 治療 |
LTRA以外の抗アレルギー薬 | ||||
発作治療 | SABA | SABA | SABA | SABA |
ICS:吸入ステロイド薬、LABA:長時間作用型β2刺激薬、LAMA:長時間作用性抗コリン薬、LTRA:ロイコトリエン受容体拮抗薬、SABA:短時間作用性吸入β2刺激薬、抗IL-5Rα抗体:抗IL-5受容体α鎖抗体
(出典:『喘息予防・管理ガイドライン2018』太字は編集部による)
ステップ1が軽症で、4が最重症になります。小難しい略語が並んでおり、イメージがしづらいかもしれません。大事なことは、ICS(吸入ステロイド)がピンクで示されている通り重要な薬剤となります。吸入ということで、喘息は内服薬ではなく吸入剤が主体になります。現在はLABA(β2刺激薬)との配合剤が主流となり、何種類か登場しております。当院では患者様の、ライフスタイルや呼気NO数値、症状などに応じて柔軟に吸入薬を使い分けていきます。吸入剤が初めての方でも、隣の調剤薬局と当院は連携しておりますのでご安心ください。使い方を丁寧にご教授していただけるようにしております。逆にご自身でご希望の吸入剤があれば伝えていただければ臨機応変に対応していきます。また、内服薬に関しても気管支喘息のガイドラインに応じて対応をさせていただきます。
一方で内服、吸入剤でもコントロールが難しい患者様は現在バイオ製剤という注射薬も登場しております。こちらに関しては値段も高く侵襲性も高いので、導入するかどうか一度患者様とご相談する形にはなると思います。
もしご希望の方は、
- 横浜労災病院
- 井田病院
- 関東労災病院
- 日本医科大学武蔵小杉病院
などにご紹介させていただきます。一方で現在バイオ製剤の一部は自己注射といってご自身で注射するお薬も登場しております。当院では、導入は総合病院にお願いしておりますが、安定した場合は、院外処方で対応することもできます。バイオ製剤処方の施設基準として、アレルギーに従事している者という条件がありますが、院長の私自身アレルギー専門医として多くの患者様を診させていただいているので対応可能です。また当院は週7で診療しており予約外でも処方可能ですので、バイオ製剤含めて患者様にとって長期管理治療を続けやすい環境づくりに努めております。
ここまでは重症例の方のお話です。一方で軽症例から中等度の方の多くは次の疑問に必ず当たります。『いつまで治療を続けなけばいけないのか?』症状が全然でないのに、いつまでも同じ薬が処方され続けているという経験がある方もいるかもしれません。現在気管支喘息の治療ガイドラインでは症状が安定していれば3-6か月おきにステップダウンを考慮することが示されています。当院では漫然と治療を継続せずに症状が安定している方は、薬量を徐々に減らしていくガイドラインに準じた治療を行いたいと思います。ただし症状が出てなくても、実は炎症がくすぶってる人が中にはいるので診断時に検査した呼気NOを定期的に行うことが多いです。治療が完全に辞めれるかどうかは正直患者様によります。しかし中途半端な治療を続けていると、どんどん悪くなるという事実はあるので、ぜひ継続して徐々に薬を減らしていければと思います。
気管支喘息発作の治療
長期管理治療は症状がない方、また軽症な症状が出続けている方の治療です。症状がひどく今すぐ対応しなければならない方にも当院は治療設備を整えております。気管支喘息発作の具立的な治療は下記のようになります。
発作型 | 小発作 | 中発作 | 大発作 | 呼吸不全 |
---|---|---|---|---|
初期治療 | β2刺激薬吸入 | β2刺激薬(反復可) 酸素投与(Spo2<95%) |
入院 ・β2刺激薬吸入反復 ・酸素投与 ・輸液 ・ステロイド薬静注 |
入院 ・インプロテレノール 持続吸入 ・酸素投与 ・輸液 ・ステロイド薬静注 |
追加治療 | β2刺激薬吸入反復 | (基本的に入院) ・ステロイド薬投与(静注・経口) ・輸液 ・アミノフィリン持続点滴(考慮) |
・インプロテレノール 持続吸入 ・ステロイド薬静注反復 ・アミノフィリン持続点滴(考慮) |
・気管内挿管 ・人工呼吸管理 ・アミノフィリン持続点滴(考慮) ・麻酔薬(考慮) |
長期間管理でステップ3以上の治療を受けている患者の発作に対しては、1ランク上の治療を考慮する。 |
まず気管支喘息発作の方はネブライザーという機械で霧状の薬を吸入します。気管支喘息発作を何回かされた方は経験があるかもしれません。気管支喘息の方は花粉症の時期や台風直後など症状悪化時が被ることが多いです。そのため当院では複数台準備しており、同時に患者様が来院されても対応できるようにしております。
またそれでも改善無い方、もしくは症状が最初からひどい方や呼気NOが非常に高値の方はステロイド+アミノフィリンの点滴を施行することが多いです。当院は処置室とは別に点滴室を設けており、中等度の治療が必要な方にも対応できるように準備しております。
酸素状態を測定しながら、この点滴と吸入で治療することが気管支喘息ではほとんどです。また気管支喘息発作の一番の原因が感染からです。胸部レントゲン写真だと気管支炎までは分からないため、点滴時に同時に採血施行して炎症反応を即日確認します。炎症反応が高く抗菌薬が必要な方は点滴から投与することも可能です。
- 酸素状態が悪い
- 点滴でも症状が改善しない
などの方は大発作以上の治療が必要になります。その場合は至急総合病院と連携して対応させていただきます。大発作以上は基本的には入院治療が必要になります。つまり当院では気管支喘息発作に関しては総合病院の外来と同じレベルでできるように準備しております。一方で気管支喘息発作の入院治療は基本的には先ほどのネブライザー吸入と点滴を入院下で連続投与し続けて炎症が落ち着くのを待ちます。そのため、お子様や介護しなければならない方がいて入院できない方は、酸素状態や状態を確認しながら連日投与も当院では可能です。総合病院ではできない小回りも当院では柔軟に行っていきます。逆に総合病院で連日ステロイド投与できない方をご紹介いただき当院で治療することもあります。気管支喘息発作の方は、苦しくて動けないレベルでなければまず当院に来ていただければと思います。もし苦しくて動けないレベルであれば大発作以上の可能性が高いのでその場合は至急救急車を手配していただいた方が、患者様のご負担が減らせるかもしれません。
まとめ
当院の特徴
- 気管支喘息かどうか、詳細な問診、検査で診断できるように努めてまいります。
- 息を吐くだけで、アレルギーの炎症があるかどうか確認する呼気NOで本当に気管支喘息かどうか、また重症度はどの位か瞬時に数値で判断します。
- 患者様の状態およびライフスタイルに合わせた吸入剤を選択し、ベストな治療を模索していきます。
- バイオ製剤で治療の方も、自己注射導入していただければ当院でも管理可能です。
- 定期的に症状を確認しながら、安定してれば呼気NO測定したうえで薬を減らしていく治療を行っていきます。
- 気管支喘息発作が起きた場合は、ネブライザー、点滴加療が可能です。入院手前までの中等度発作であれば当院で対応致します。
気管支喘息は、慢性疾患として治療を継続していかなければならない病気です。症状がないとついつい油断しやすいのも事実です。そういった意味では気管支喘息の一番の敵は油断かもしれません。当院では週7、日によって夜遅くまで診療することで少しでも多くの患者様に継続しやすい環境を作って良ければと思っております。また定期的に検査も行い、患者様の状態をお話だけではなく多角的に評価していればと思います。
私も気管支喘息の重症の患者様を多く見ていますが、その多くの方は残念ながら適切な治療を行ってこなかった方が多いです。気管支喘息で一人でも苦しまない、そして気管支喘息がない人と同様の日常生活が送れるよう全力でサポートしてまいります。