喘息とはタバコやストレス、ほこりなどの些細な刺激で咳や痰が増加し、息苦しさなどの様々な症状がみられる病気です。
症状が現れる原因としては。気道が慢性的な炎症状態である為、健康な人の気道より狭く、空気が通りにくくなっていることが挙げられます。
気道が炎症している状態が続くと、より気道が刺激に対して敏感に反応するようになります。結果として、発作が起こり易く、症状も重症化しやすくなります。
発作で一時的に傷ついた気道の組織は修復されますが、炎症を放置すると不完全な修復により気道の壁が肥厚します。この状態となると、さらに気道が狭窄する為、より発作が起き易くなる負のサイクルに陥ってしまいます。
喘息治療では、このような状態になるのを防ぐ為に、適切で迅速な検査、治療を行い、重症化を防ぐことが大切です。
咳喘息の定義は、気管支喘息の特徴である喘鳴(ヒューヒューゼーゼー)等の症状を伴わない長引く咳です。気管支喘息同様に気道の慢性的な炎症が関与していると言われております。一見馴染みの無い病気ですが、長引く咳の3、4割は咳喘息が原因であり、呼吸器内科では一般的な病気です。
しかし、咳喘息は適切な治療をしない場合3,4割が気管支喘息へ悪化する病気であり、気管支喘息でないからと言って侮ることはできません。また、気管支喘息の患者さんの中に喘鳴の症状がない場合もあります。つまり、咳喘息と混同し易く、咳喘息と思い治療をしていたら気管支喘息であった、気管支喘息へ悪化したというケースも多くあります。
重要なことは咳喘息だとしても、気管支喘息でも長期的に管理し適切な治療を行う必要があるということです。咳喘息は呼吸器疾患であり、風邪が長引いている咳とは異なるので注意しましょう。
気管支喘息の病態は実はまだ明らかになっていないことが多いです。以前はアレルギーが関与していると言われておりましたが、現在ではアレルギー以外の要因も炎症に関与していることが解明されています。その為、気管支喘息の中にも種類に分かれるという通説がありましたが、どのように分類するのか、どのような種類があるのかに関しては結論が出ていません。
説明の際には、気管支喘息とは気道が持続的に炎症している状態になることで気道が過敏になり、咳、痰、息苦しさ、喘鳴(ヒューヒュー・ゼーゼー)の症状がみられる病気としますが、炎症が起こる機序については未だ未解明な部分の多い病気であるということです。
問診で喘息の疑いがある場合はレントゲン撮影の検査を行います。
喘息と診断され、レントゲン検査をせずに吸入薬の処方をされているという場合では、そもそも喘息であるのかを疑って診察する必要があります。それほど、喘息や咳の症状がみられる方のレントゲン検査は重要となります。
喘息の方のレントゲン写真は全く異常所見が無いことが特徴です。むしろ、レントゲン検査で異常がある場合は喘息以外の疾患の精査をする必要があるのです。
喘息の診断は非常に難しく、他の疾患と可能性がないか精査することが重要です。
問診では喘息の疑いがあり、胸部レントゲン検査を実施したら肺炎であったというケースは多くあります。
など色々な方がいますが、初期の診断を誤ると、適切な治療を開始することができず、結果として患者様の不利益へ繋がります。胸部レントゲン写真の被ばく量は、日本とアメリカの片道分の飛行機乗車時の自然被ばく量とほぼ同じ量となります。妊婦の方も、防護服を付けて撮影することが可能なので安心して検査していただくことが可能です。
胸部レントゲン検査で異常がなかった場合は、アレルギー検査を行います。
当院では喘息の疑いはある方には呼気NO検査という検査を行います。この検査は2010年頃に登場した新しい検査であり、呼気時のNO(一酸化窒素)の濃度を調べる検査です。NOとはアレルギーによる炎症(好酸球炎症)がある方に発生する物質であり、このNOの濃度を調べることで、炎症の有無、程度が分かります。この検査では一定量の流量の息を吐くだけなので痛み等もありません。
呼気NOの値が、
25以下(小児20以下)…アレルギーの炎症が低い
25以上(小児25以上)…アレルギーの炎症の存在が考慮される
50以上(小児35以上)…アレルギーの強い炎症が存在する
となります。
その為、成人の方は25以上であれば喘息の診断基準であるアレルギー物質などに反応して咳が出るという項目に当てはまる為、喘息の可能性が高くなります。
当院では喘息の診断をする際、胸部レントゲン写真と呼気NO検査を合わせて実施することを強く推奨しております。
いつもの咳であるからと容易に吸入薬治療を開始すると、十分な効果が見られなかった場合に呼気NO検査を実施しても、
上記の2つの可能制があります。それぞれ治療法が大きく異なりますが、この時点ではどちらかを判断することが非常に困難となります。
結果として、『喘息の効果が不十分』かつ『他の病気も合併している』の両方の可能性を考慮し、治療法や検査を大幅に検討し直さなければならなくなります。後々の患者様への負担を軽減する為にも、治療して治らなかったら呼気NO検査をすればいいと安易に考えるのではなく、呼気NO検査まで検査していただくことをお勧めします。
喘息の治療には、再発を防ぐ為に適切な治療期間が必要です。呼気NO検査で高値が出た場合でも、すぐに治療を開始することができないことが喘息の診断や治療の難しいところです。
さらに、「症状が現れたらその度に治療をすればいい」という安易な考えで治療を行うと、3、4割が気管支喘息に移行する病気なのです。風邪のように咳が治まれば完治ではなく、病気と長く付き合う必要があります。
一方で治療期間はいつまでなのか?咳喘息と診断されたら一生治療が必要なのか?と疑問に思う方もいると思います。その為にアレルギー検査が必要となります。
アレルギー検査でアレルギーが原因と分かり、そのアレルゲンを特定する事で、
等の治療方針を確定することができます。
基本的に喘息のアレルギー検査は、国が可能性が高い物質の検査をまとめた、CAP-16鼻炎喘息の項目を調べます。具体的な内容ですが、
を調べることが多いです。季節性のアレルゲンの関与が疑われる方は、関与している季節のみ治療を行うことで再発を防止することが可能です。一方、ホコリやダニなどの通年性の物質がアレルゲンの方は、薬の減量を慎重に行う必要があり、間違えると症状が癖になりやすい、悪化しやすい状態になる恐れがあります。その為、患者様一人一人に合った最適な治療を行う為、咳の原因となるアレルゲンの検査をお勧めしております。
また、喘息の初期治療で効果が見られない方や、呼気NO検査で高値であった方には、強いお薬を使用する必要があります。その為、腎機能や肝機能などをアレルギー検査と同時に採血し、薬の使用が可能か調べること一般的です。また、胸部レントゲンで異常がない場合でも気管支炎などの他の疾患を合併している可能性がある為、炎症反応や特殊な感染がないかも調べます。採血には痛みが伴う為、当院では1度でまとめて採血をすることをお勧めしておりますが、採血を施行すると3割負担の方は5000-6000円程度かかり、初診代+胸部レントゲン、呼気NO代も含めると1万を超えてしまうことが多く、当院では採血の施行について患者様とご相談してから行っております。当院で検査を行う際は必ず採血を行うということはありませんので、安心してご来院ください。患者様に寄り添い、柔軟に対応させていただいております。
咳喘息は明確でなく、非常にで難しい病気です。それは診断基準では8週間咳が続くことと定義されていますが、実際の臨床ではそこまで診断に時間を使うことができないことが多いことが要因です。また、近年ではアレルギー以外の炎症も関与している場合があると言われております。呼気NO検査で咳喘息の可能性を精査しますが、呼気NO値が低くても咳喘息の可能性を否定しきれないことが咳喘息が難しいところです。呼気NO値が低値でも、難治性の咳嗽の場合では咳喘息として治療を行うことがあります。当院では、患者様の咳の症状を抑えるよう最善を尽くしてまいります。
気管支喘息は、長期的に治療を継続する必要がある慢性疾患です。症状がないと安心してしまいますが、気管支喘息は油断してしまうことが一番危険です。当院では可能な限り多くの患者様に治療を継続していただく為に、週7日診療し、夜遅くまで診療している曜日も設け、日々忙しい患者様でも安心して通院できる環境をご用意しております。また、定期的に検査を行うことで、問診から患者様の状況を把握するだけでなく、多角的に評価していければと思います。私が診てきた重症となった気管支喘息の患者様の多くは、適切な治療を行ってこなかった方が多いのが現状です。当院では気管支喘息で一人も苦しむことはなく、病気になる前と変わらない日常生活を送ることができるよう全力で支えてまいります。